π-systemλ-system

Posted: 2023-04-15

1. σ-加法族

集合Eの部分集合族E2Eσ-加法族(σ-algebra)であるとは,以下の(s1)(s3)が成り立つことである.

  1. EE
  2. AEならばEAE
  3. 集合列(An)nNについて,任意のnNAnEならばnNAnE

2. π-system

集合Eの部分集合族E2Eπ-system(またはp-system)であるとは,Eが積(product)について閉じていることをいう.すなわち以下の(p1)が成り立つことをいう.

  1. A1EかつA2EならばA1A2E

3. λ-system

集合Eの部分集合族E2Eλ-system(またはd-system)であるとは,以下の(d1)(d3)が成り立つことである.

  1. EE
  2. A1EかつA2EかつA1A2ならばA2A1E
  3. 増加する集合列(An)nNについて,任意のnNAnEならば,nNAnE

(An)nNが増加する集合列(以降,単に増加列と呼ぶ)であるとは,nAnAn+1が成り立つことである.A:=nNAnをその極限と呼ぶ.

λ-system⟨d⟩Eugene Dynkinにちなむ.

命題

EEσ-加法族であることは,EEπ-systemかつλ-systemであることと同値である.

証明

σ-加法族ならばπ-systemであることを示す.A1EかつA2Eならば(s2)によりEA1EかつEA2Eが成り立つ.このとき(s3)より(EA1)(EA2)Eである.(s3)De Morganの法則によりA1A2=E((EA1)(EA2)))Eを得る.

証明木 Π1 [σ-algebra]1(s3)(s2) E((s3)(s2))π-systemπ-system E

次にσ-加法族ならばλ-systemであることを示す.(d1)(s1)は同値である.

証明木 Π2 [σ-algebra]1(s1) E(s1)(d1)(d1) E

A2A1=A2(EA1) なので,(s1)π-systemであることから(d2)の成立が確認できる.

証明木 Π3 [σ-algebra]1(s2)Π1π-system(s2)π-system(s)π-system)(d2)(d2) E

(s3)から(d3)は明らかである.

証明木 Π4 [σ-algebra]1(s3) E(s3)(d3)(d3) E

以上よりσ-加法族ならばπ-systemかつλ-systemであることが示された.

証明木 Π5 Π1π-systemΠ1(d2)Π2(d3)Π3(d1)λ-system Iπ-systemλ-systemσ-algebra(π-systemλ-system) 1, I

逆を示す.(s1)(d1)は同値である.

証明木 Π5 [π-systemλ-system]2(d1) E(d1)(s1)(s1) E

任意の AE をとる.このとき(d1)より EE であり,また明らかに AE なので(d2)より EAE

証明木 Π6 [π-systemλ-system]2(d1)(d2) E(d1)(d2)(s2)(s2) E

集合列(An)nNが各nAnEを満たしているとする.このとき増加列(Bn)nNBn=i=0nAiで定義する.A0A1=E((EA0)(EA1))であり,(d2)よりEA0EかつEA1Eπ-systemであることより(EA0)(EA1)E再度(d2)を用いることでA0A1Eとなる.帰納的に任意のnNBnEであることが容易に確認できるので,(d3)よりnNBnEである.nNBn=nNAnであるからnNAnE

証明木 Π7 [π-systemλ-system]2π-system(d2)(d3) E(π-system(d2)(d3))(s3)(s3) E

したがってπ-systemかつλ-systemであるとき,σ-加法族であることが示された.

証明木 Π8 Π5(s1)Π6(s2)Π7(s3)σ-algebra I(π-systemλ-system)σ-algebra 2, I
以上より命題が証明された.∎

参考文献

  1. Erhan Çınlar (2011) Probability and Stochastics. Springer New York.