π-systemとλ-system
1. \(\sigma\)-加法族
集合\( E \)の部分集合族\( \mathcal{E} \subset 2^E \)が\(\sigma\)-加法族(\(\sigma\)-algebra)であるとは,以下の(s1)–(s3)が成り立つことである.
- \(E \in \mathcal{E} \).
- \(A \in \mathcal{E}\)ならば\(E \setminus A \in \mathcal{E}\).
- 集合列\( (A_n)_{n \in \mathbb{N}} \)について,任意の\( n \in \mathbb{N} \)で\( A_n \in \mathcal{E} \)ならば\( \displaystyle \bigcup_{n \in \mathbb{N}} A_n \in \mathcal{E} \).
2. \(\pi\)-system
集合\( E \)の部分集合族\( \mathcal{E} \subset 2^E \)が\(\pi\)-system(またはp-system)であるとは,\( \mathcal{E} \)が積(product)について閉じていることをいう.すなわち以下の(p1)が成り立つことをいう.
- \( A_1 \in \mathcal{E} \)かつ\( A_2 \in \mathcal{E} \)ならば\( A_1 \cap A_2 \subset \mathcal{E} \).
3. \(\lambda\)-system
集合\( E \)の部分集合族\( \mathcal{E} \subset 2^E \)が\(\lambda\)-system(またはd-system)であるとは,以下の(d1)–(d3)が成り立つことである.
- \( E \in \mathcal{E} \).
- \( A_1 \in \mathcal{E} \)かつ\( A_2 \in \mathcal{E} \)かつ\( A_1 \subset A_2 \)ならば\( A_2 \setminus A_1 \in \mathcal{E} \).
- 増加する集合列\( (A_n)_{n \in \mathbb{N}} \)について,任意の\( n \in \mathbb{N} \)で\( A_n \in \mathcal{E} \)ならば,\( \displaystyle \bigcup_{n \in \mathbb{N}} A_n \in \mathcal{E} \).
\((A_n)_{n \in \mathbb{N}}\)が増加する集合列(以降,単に増加列と呼ぶ)であるとは,各\( n \)で\( A_n \subset A_{n + 1} \)が成り立つことである.\( A := \bigcup_{n \in \mathbb{N}} A_n \)をその極限と呼ぶ.
\(\lambda\)-systemの〈d〉はEugene Dynkinにちなむ.
命題
\(\mathcal{E}\)が\(E\)の\(\sigma\)-加法族であることは,\(\mathcal{E}\)が\(E\)の\(\pi\)-systemかつ\(\lambda\)-systemであることと同値である.
証明\(\sigma\)-加法族ならば\(\pi\)-systemであることを示す.\( A_1 \in \mathcal{E} \)かつ\( A_2 \in \mathcal{E} \)ならば(s2)により\(E \setminus A_1 \in \mathcal{E}\)かつ\(E \setminus A_2 \in \mathcal{E}\)が成り立つ.このとき(s3)より\( (E \setminus A_1) \cup (E \setminus A_2) \in \mathcal{E} \)である.(s3)とDe Morganの法則により\( A_1 \cap A_2 = E \setminus ((E \setminus A_1) \cup (E \setminus A_2) ) ) \in \mathcal{E} \)を得る.
次に\(\sigma\)-加法族ならば\(\lambda\)-systemであることを示す.(d1)と(s1)は同値である.
\(A_2 \setminus A_1 = A_2 \cap (E \setminus A_1)\) なので,(s1) と\(\pi\)-systemであることから(d2)の成立が確認できる.
(s3)から(d3)は明らかである.
以上より\(\sigma\)-加法族ならば\(\pi\)-systemかつ\(\lambda\)-systemであることが示された.
逆を示す.(s1)と(d1)は同値である.
任意の \(A \in \mathcal{E}\) をとる.このとき(d1)より \(E \in \mathcal{E}\) であり,また明らかに \(A \subset E\) なので(d2)より \(E \setminus A \in \mathcal{E}\).
集合列\( (A_n)_{n \in \mathbb{N}} \)が各\( n \)で\( A_n \in \mathcal{E} \)を満たしているとする.このとき増加列\( (B_n)_{n \in \mathbb{N}} \)を\( B_n = \bigcup_{i = 0}^n A_i \)で定義する.\( A_0 \cup A_1 = E \setminus ( (E \setminus A_0) \cap ( E \setminus A_1 )) \)であり,(d2)より\( E \setminus A_0 \in \mathcal{E} \)かつ\( E \setminus A_1 \in \mathcal{E} \).\(\pi\)-systemであることより\( (E \setminus A_0) \cap (E \setminus A_1) \in \mathcal{E} \).再度(d2)を用いることで\( A_0 \cup A_1 \in \mathcal{E} \)となる.帰納的に任意の\( n \in \mathbb{N} \)で\( B_n \in \mathcal{E} \)であることが容易に確認できるので,(d3)より\( \bigcup_{n \in \mathbb{N}} B_n \in \mathcal{E} \)である.\( \bigcup_{n \in \mathbb{N}} B_n = \bigcup_{n \in \mathbb{N}} A_n \)であるから\( \bigcup_{n \in \mathbb{N}} A_n \in \mathcal{E} \).
したがって\(\pi\)-systemかつ\(\lambda\)-systemであるとき,\(\sigma\)-加法族であることが示された. 以上より命題が証明された.∎